講演;谷川英和氏 IRD国際特許事務所 京都大学研究員 ITに強い弁理士

ソフトウェア特許出願について」
 -研究内容 特許工学とは?
  ソフトウェア開発プロセスを特許開発できないか?という研究をしている

 -ソフトウェア特許とは
  審査基準の変化
   ハードのみ(70年)⇒
   記録媒体クレーム 記憶した媒体に特許を認める⇒
   ソフトウェアクレーム(最近 ※2000年から?)プログラム自体の保護

   ハード・ソフト一体クレームはハードから分離したら保護されない
    (※特許の間接侵害に該当する場合もある)

   ソフトウェアに高付加価値をみとめるため
   ⇒ソフトウェア特許の重要性の増大

  ソフトウェア特許の特徴
   ・不可視 見えない
   ・具現化しやすい
   ・発明の抽出が難しい <これが一番重要
   ・着想段階が主<>ハードは具現化段階もじゅうよう
   ・アイディア展開力が高い(いろいろなものに応用可能)
   ・記載自由度高い
   ・明細書厚い
 -ソフトウェア特許の発明手法
  -着眼点
   1.技術の流れを読む
   2.未来を空想する
   3.制約をはずす
  -技術のスパイラル(スパイラル開発による技術革新がおきる
   発明>改良>発展>発明、、、の繰り返し
    一方向テレビ>リモコン>高画質⇒
    双方向テレビ>(※忘れた)>発呼アルゴリズム
    蓄積型テレビ>インターネット>高速回線
  -ソフトウェア屋によって特許を発明するには
   ・空想する
    ex: CPUが早い、メモリふんだん、、、など制約をとっぱらう

 -発明の展開
  出てきた発明だけで出願すると権利が狭いので範囲を広げる
  -上下展開
   ↑上位概念=抽象化 クレーム化技術 ex従来技術の手前でとめる
   ↓下位概念=具体化思考 ex具体的な用途を考慮
  -横展開
   ⇔開発工程を考慮
    最終的に出来上がったアイデアが1つあるとすると
    その前に回りに無数の消えたアイデア(没になったもの)がある
     ⇒同業他社への抑止に利用
   ⇔関連する技術を考慮
    特許の技術を利用したものに対する特許をさらに重ねる。
     Ex:独特な放送方式の特許⇒放送方式に対する受信方式も特許になるのでは?
   特許を上下左右に展開することで1つのアイデアから20−30の特許が
   作成できる。(あとはコストとのトレードオフで取得を選択する)

  具体例:
   -ブラウザ特許  技術の流れをよんで空想
    90年出願。出願時はもっとクレームが広範囲だったとのこと
    SGMLと画面の親和性に注目し、、、、
     1.ブラウザ特許
     2.サーバ特許
     3.電子商取引必須特許
    テーブル関係でフィールドを並べた場合は特許侵害の恐れがある
    HTMLの仕様自体がクレームに含まれるため、今後の動向に注意!

    -参考 2945753 2982752 2982753

   -特許の展開例
    -原案:野球でビンゴ
     ヒットを打った選手をあらかじめビンゴシートに登録し、
     試合結果が逐次ユーザに送信されビンゴゲームを楽しめる。

   -これを膨らませると(一般性を持つ方向で展開)
    条件を設定する条件設定部(野球の試合)
    判断元データを受信するデータ受信部(ユーザーのビンゴシート)
    それらの結果が合致するか判断する判断部(ビンゴの結果判断)
    これらを利用する放送方式を特許の範囲として申請

    侵害するとしたら:
     テレビを用いて連続した動作で
     「TOTOの申し込み、試合の表示、TOTOの結果を画面に表示する」
     という放送方式を利用した場合、侵害の恐れがある。

 -おわりに
  -発明とは、、、
  ・誰でも簡単に発明できるもの
    ソフトウェア特許も特許のひとつ。
    ちゃんと、形式を守れば通らないということはない。
    (※もちろん、既存のものと同じというのでは駄目だけどね)
  ・なれないうちは、つまらないものでもたくさん出すべし
  ・あたる発明は少ない

  • QA

Q
2001年より前にはソフトウェア特許がない
ハードウェアや媒体クレーム特許では、ソフトウェア部分だけ切り出していいのか?
A
直接侵害にならないが間接侵害になる恐れがある
 特許法101条
 特許の間接侵害
  特許の請求項の1部分を利用している場合その特許以外では利用できない

 例:ワープロの処理=文書処理装置の特許で保護 (ハードウェア特許)
  でも、ソフトウェアで上の文書処理装置に抵触した場合は
  OSでソフトを動かした途端に文書処理装置に変化することになると主張
  装置の仕組みを真似てたソフトを作った場合
  ソフトを動かしたら処理装置になるからまずい?
  (あくまで意見。判例がないので違反かどうかわからない。
  そのへんの裁判がおきたっていう判例がみつからない。)

  特許を書くひとはクレーム範囲を広げ、ソフトウェア単品で利用されることがないように注意するべし

  日本では訴訟がなかった。実例としてアメリカで訴訟があったかどうか?
  そもそも、米国では媒体特許があるかな?
  侵害の形態より、技術の合致が論点となると思われるが、
  これが論点になった判決はあるのか?

Q
HTML特許があるにかかわらず、指し止めできない。
A
これは特許がクレームのみに使うだけでなく、
防衛に利用してしまう特許となる場合もある。

Q
公知技術が海外にある場合、通ってしまうとまずい。
特許庁のひとが優秀であると信頼していいのか?
先行技術であっても特許にならないものがどんどん特許になっている

A
優秀(※らしい)。一般からの技術情報の提供窓口も用意してある。
アメリカの特許は通りやすくひどいと
日本はちゃんと特許が通り、ロジックや審査基準がきっちりしている。
先行技術が存在した場合、取り消しを行う仕組みがある。

議論:
オープンソース技術者は一般ユーザーと同じ立場にいることができるのか??
特許について、どう回避できるか?など、議論が起きてました。

  • 他人の特許に抵触するのを防ぐには

 -既存の特許技術の回避について
  専門家でないと明細書をみて、クレーム範囲がわからない。
  非特許データベースなどを作成するというのはどうだろ? (まつもと)

 -自分が発明したのを公知技術にする
   ・特許庁に技術情報の提供
   ・ある時点において公開していることを証明できる

  一応、個人レベルでひっそりと広げていた場合でも公知技術になる。
  しかし、公開したという証拠を残す必要がある。
  特許を申請するひとが公知技術を知らない場合は通ってしまうので、
  後で取り消す際に証拠能力があるものを提出しなければならない。

 -公知の認定について
  公開していたことの証明は難しい
 (※フォレンジックと同じで、日本の裁判官は
   デジタル署名やハッシュ、タイムスタンプを証拠として認めていない。
   (少なくとも、法律では認められてない)
   優秀な弁護士さん (M事務所とか)に証拠の鑑定を依頼しないときつそう)

  課題:証拠に対するセキュリティ
   いつその情報がオープンになったかを裁判で証明する方法が大変
   デジタルの証拠を認めて合意形成する必要があるのでは?
   裁判には電子証明が認められるように法律で保護が必要なのでは?

  特許庁に情報提供をすることで公知として認めてもらえる。
   ただし、ソースを送っても駄目。

  課題:ソフトの開発者は特許のための文書を作るのか?
   ソフトから発明を取り出し、自分の発明範囲を証明することは難しい。
   問題があった時点でクレームに対して
   どこが抵触するかソースコードなどから抽出してくださいとできる(※?)

  • 特許の法律と特許庁についてあれこれ

  -来年から特許の法律が変わる
  -特許は(来年になれば匿名で?今でも可能?)情報提供による無効化を申請できる
  -いまでも特許庁は文献サービスを受け付けている。
   わかるように技術情報を提供したら利用してもらえる。
   公知にしたいというだけで特許庁にメールをなげてもいい。
   (でも、一方通行でメール投げるのはおかしいですねぇ(まつもと))
  -特許庁がホウタイ(※聞き取れなかった)を公開する方向性に向かっている